親が「公務員は安定していて、楽だから受けてみろ。」なんて言う人もまだいるみたいですね。でも実際は大変で、難しい仕事が多いですよ。
親戚の公務員のおじさんも精神疾患になる人も多いって言ってた。
結論:安定はしているが、決して楽ではないし、民間企業にはない苦労があるのが事実。
市役所の仕事は安定はしていますが、決して楽な仕事ではなく、民間企業にはない大変さがあります。最近では若い職員が辞めていくことも多いです。「大変さ」も色々な視点がありますが、いくつかご紹介します。
定時退社は少数派で残業はある。
「どうせ市役所の職員なんてみんな定時退社して、残業なんてほとんどないんでしょ?」
と思われている方が世の中には多いかもしれませんが、現実はそうではありません。
市役所の定時は17:15が多いですが、一斉に職員がその時間に帰ることは、まずありません。
むしろ、定時のチャイムが鳴って、すぐに立ち上がって帰る人は少数です。
ほとんどの人は、定時が来て、30分後~1時間後に帰っていく感じです。もちろんこれくらいでは残業代は申告しません。
なぜ定時にぱっと帰らないかといえば、仕事が中途半端なので区切りのいいところまでやって帰りたいから、上司が帰らず帰りにくいから、がほとんどの理由だと思います。
区切りのいいところまでやりきるかどうかは職員によって意識がことなります。
次の日にまわして、定時には帰るという職員もいます。
部長、課長等の上司がよく残業するかは部署やその上司によります。定時にぱっと帰る幹部職員の元では、部下の職員も帰りやすいですし、雰囲気もいいです。
仕事熱心で21時くらいまでずっと残っている部長、課長職員だと、参考文献や参考資料を読んだりしています。
こういう上司は、上司自らが「定時だから、やらなきゃいけない仕事がないやつは帰れよー」っと声をかける場合は帰りやすいですが、黙って仕事しているタイプの方や話しかけにくい方の場合は帰りにくいです。
定時で帰りやすいかどうかの雰囲気は部長、課長で変わる
市役所では残業があります。
総務省が平成29年3月29日に記者発表している地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果では、県庁所在市の市役所の年間の1人当たりの時間外労働時間は159.6時間で、民間の154時間と同程度でした。また、過労死ラインと呼ばれる80時間を越えて働いている職員は1.3%いました。
夜の21時ころに市役所の横を歩いてみると明かりがついているので、残業しているのがよく分かると思います。
よくあるのは、議会における市長答弁や資料の作成、県や国へ提出する事業の申請書や調査の作成、イベントの準備、災害対応等です。
残業は毎日深夜までやるということもあります。残業の多い部署は自治体にもよりますが、一般的に財政課は残業が多いです。
財政課では、次年度の予算編成の時期、前年度の決算報告の時期がかなり忙しく、夜遅くまで残業しています。
財政課には、子育て真っ最中で、保育園に迎えに行かなくてはいけない等の職員が配属されることはあまりありません。
そういう子育て等の事情がある職員は人事課に申告又は相談し、人事課が事情を考慮して配置していることが多いです。
なお、残業代は予算で部、課毎に確保されており、残業時間を申告して支給がされます。
上限に達してしまった場合は、人事課に相談し、他の部、課の予算から流用して対応します。ただし、それでも全体の予算に上限があるので、サービス残業することもあります。
また、あえて残業を申告しない職員もいます。
なぜ申告しないかというと、あまりに残業が多くて申し訳ないから、市民のためなら残業代はいらない、好きでやっているから、申告しにくい雰囲気だから、という理由だと思います。
自己犠牲はよし、自己犠牲で仕事をするのは職員の責任とする雰囲気がある市役所も多いです。
土日に出勤して、振替休日(代わりに平日に休むこと)をしていない職員もいます。
しかしこういったことが、限られた予算と時間で、効率的にめりはりをつけて仕事をするというお金や時間のコスト感覚を麻痺させている部分はあると思います。
結果的に、それが、無理な仕事量を少ない人数でやり、質的にも悪い仕事になり、ときに体や精神を壊す職員を生むことにつながっている部分も否定は出来ません。
部長や課長は、本当に残業する必要があるのか定期的に確認する、残業が1人に片寄っているならば自分も含め他の職員が手伝うよう指示する、残業を常時しないと仕事が処理しきれないなら人員増員を人事課に要望する等、適切に人事管理する必要がありますが、それをやっている幹部職員がまだ少ないのが市役所の現状です。
ただ、最近ではワークライフバランスという言葉も浸透してきており、人事課が、全部署横断的に定時になったら部長や課長が職員に帰るように声かけする、ノー残業デーを設けて放送する等の取り組みを色んな市役所でやっています。これはいいことだと思うのでもっとやるべきだと思います。
ちなみに、総務省が地方公務員の時間外勤務に関する実態調査において、地方公務員の出退勤時間の把握方法を調査していますが、下記のとおり、タイムカードやICカード等の客観的な記録で把握しているところはまだ少なく、職員からの申告等の人間によるものが多いです。
仕事の内容も簡単ではない
市役所の仕事は窓口で書類を発行したりするルーティン業務のイメージをもたれているかもしれませんが、実際は多岐にわたります。
仕事の難易度も色々で、決して楽でないしんどい仕事も多いです。
例えば、福祉課の生活保護担当者は大変な仕事のひとつといわれます。
生活保護の担当者は、面接や家庭訪問を通じて生活保護受給者からの幅広い相談に応じたり、必要な保護決定を行うなど、被保護者の自立を支援する仕事を行います。
家庭訪問では、ゴミまみれの部屋、死亡している現場、暴力的な人等への対応をしたりもします。
受給者が家賃を滞納しているから代わりに払え、受給者が夜に騒がしい等、クレームが市役所に入ってくることもあります。
プライベートで買い物中に被保護者に出会ってきまずい思いをすることもあります。
刃物を持った被保護者が、窓口を訪れ、若い男性職員を負傷させたなんていう事件も過去には起こっています。肉体的にも、精神的にも大変です。
ちなみに「健康で文化的な最低限度の生活」という市役所の生活保護担当者の奮闘を描くドラマが一時話題となりました。
病気や失業で、誰もがどん底に突き落とされる可能性があるこの世の中。そんな中で、生活保護という最後の砦も敷居が高くなっていく現実。
その狭間で主人公の新人公務員、義経えみるが生活保護担当として激務の中挑戦していく姿が描かれています。
生活保護ってみんなが思うようなものではなく、気を遣ってひっそりと暮らしていることもわかるマンガで、わかりやすく、勘違いが正せます。
原作者の柏木ハルコさんは生活保護者や公務員に取材をしてマンガを描いていて、生活保護や市役所の職員の仕事を知るのにとても参考になりますので、ドラマかマンガどちらか公務員試験の勉強の合間に見て下さい。
仕事のイメージがわくかもしれません。
補助金の交付は、商工課、観光課、農林水産課等、産業振興系の多くの部署が持つ共通の仕事です。
まちづくりを進めていくため、補助金で動機付けを行い、施策を推進していきます。
どうやったら補助金がもらえるかというのが書いてある補助事業要綱を作成し、補助金の申請受付をし、審査を行います。
事業にもよりますが、大量の申請を正確に確認、審査しなければならず、深夜の残業が続くこともあります。
また、要件を満たしていない申請者から、補助金を交付するよう怒鳴って要求されることもあります。
議会対応も全ての部署共通な大変な仕事です。
まず、議員から質問が事前に通告されますが、質問自体の内容について分からない点があれば議員に電話し確認します。
それから、課長、部長と相談し、回答案及び資料を作成します。
回答案と資料の作成は夜遅くまでかかることが多いです。
その後、市長に回答案について説明し、承認をもらいます。
修正指示を市長からうけることが多く、また出直して修正を行い市長説明を繰り返し、議会までに承認をもらいます。
一般的には、議会対応は連日夜遅くまでかかり土日も出勤することが多く大変な仕事のひとつです。
議会本番では、市長が主に回答しますが、論戦中に後ろで控えて、サポートすることもあります。間違ったことは言えないのでみな緊張しています。
土日のイベントで出勤することも多いです。
市役所のイベントは、民間にイベントを委託することもありますが、◯◯協議会や◯◯実行委員会等の任意団体ををつくり、そこに補助金等を交付し、その任意団体が主催することが多いです。
例えば、◯◯祭り実行委員会のような団体です。
この団体の委員はだいたい市内や地域の商工会、婦人会、自治会等の各団体の会長と市長で、事務局が市の担当部署になることがほとんどです。
実行委員会の委員はほとんど何もすることはなく、実働部隊は事務局となった市の担当部署の職員です。
実行委員会の事業計画、収支計画を作成し、主要な実行委員に事前に説明し、総会を行います。
市長には必ず説明しますが、修正があることも多いです。
総会を行ってすんなりいけばいいですが、反対意見も出ることもあり、色んな人の板挟みになりながら意見を調整するのに苦労したり、ストレスで体を壊すことが少なくないです。
また、コロナ渦においては、イベントを実施するのか、しないのかで意見が割れたり、結論がコロコロ変わることも多く、その度に、担当者が施設や物品のキャンセルや、広報を行ったりと大変苦労します。
イベントは土日が多く、他の担当部署のイベントも手伝いで出勤することも多いです。振り替え休日を取るように言われていますが、忙しくてなかなかとれない職員もいるのも事実です。
安定はしています
市役所職員が免職(民間企業でいう解雇のこと)される数は少ないです。
総務省が出している令和元年度地方公務員の懲戒処分者等に関する調査結果によると、全国の市町村の懲戒免職は241人、分限免職は100人、合計341人です。
全国の市町村は1718ありますので、1自治体あたりの免職者数は0.19人です。
これは、1つの市役所で5年に1人免職(解雇)される人がいるかいないかというレベルです。
市役所は、部署ごとに、色々なKPI(Key Performance Indicatorsのこと)という目標数値があります。例えば、出生数、移住者数等です。
これらのKPI達成に向けて、色々頑張っていますが、届かなくても、解雇されるということはまずありません。
また、景気が悪くなっても、給料は減らされることはあっても、景気を理由に解雇されるということはありません。
こういったことから、安定しているというのは事実です。
まとめ
このように市役所の仕事は安定はしていますが決して楽ではありません。
インターネット上には、未だに市役所の仕事が楽であるとか、甘ったれているとか、ぼーっとしている人が向いているとか、怒られなくて天国とか、とても市の職員が書いているとは思えないことが載っていますが、実際はそのようなことはありません。
マニュアルどおりにやればいいという仕事ももちろんありますが、それ以外の突発的な仕事もかなり多くあり苦労することも多いです。
市役所の仕事の大変さを知る一番いい方法はインターンシップです。
最近では、多くの市町でインターンシップをしています。たいてい1日から2日くらいだと思いますが、末端の担当者と一緒に働く時間もあると思います。
そのときは本音を聞けるチャンスですので、事前に質問をリスト化しておいて聞いてみてください。
そのときに、「市役所の職員をおすすめできますか?」と聞いてみてください。
きっと、その職員のそれまでの体験をふまえて「こういう人なら向いているけど、こういう人は難しいかもしれない。」といった答えが返ってくると思います。
市役所の職員募集ページは明るいこと、やりがい等は載っていますが、大変なところは書かれていません。
インターンをすることを絶対におすすめします。
市役所を志望される方、試験を受けようか悩んでいる方は、民間には民間の大変さがあるのと同様、公務員には公務員の大変さがあることを理解しておいたほうがよいです。
市役所に入れば楽が出来ると思っていると、現実とのギャップに後々悩むことになりますので注意が必要です。
市役所を志望している方は、仕事は大変であると認識し、覚悟したうえで、試験をうけましょう。