解決型のテーマは市の抱える問題に対し、受験者の考え(解決方法)を問うものです。
「◯◯市をよくするため、職員として挑戦したいことを述べなさい」
「◯◯市の人口減少に歯止めをかけるため、何が必要かあなたの考えを述べなさい」
「市民が生き生きと生活をおくるため、◯◯市職員としてあなたが出来ることを述べよ」
「あなたが◯◯市に貢献できることを述べよ」のようなテーマです。
事前に市の「総合計画」や「まち・ひと・しごと地方創生戦略」で現状把握をしておく
市役所には総合計画というのがあります。
これは、まちづくりの基本的な理念や将来像などを定めた基本構想、その基本構想に基づいた具体的な施策を示す基本計画、その基本計画にもとづく具体的な事業を示す実施計画の3つで主に構成されており、これにより行政の運営を行っています。
10年スパンでの計画で、市役所の全部署、全職員の行動の指針となるもので、これを読むことで、市の問題やそれに対し、何をやろうとしているかという解決方法も見えてきます。
市役所を受験される場合は、必ずこの総合計画を事前に一読してください。
そうすることで、小論文や面接の対策になります。
出典:栃木市総合計画
同様に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は国が人口減少を克服し、将来にわたり活力ある日本社会を維持するため「まち・ひと・しごと創生法」で市町村に戦略の策定を努力義務と課しているもので、多くの市役所が作成しています。
総合計画と同じように、市の問題、課題、解決方法、方針が書かれていますので、一読しておきましょう。
「総合計画」も「まち・ひと・しごと創生総合戦略」も紙に印刷して、余白に自分で赤字でまとめることをお勧めします。そうすることで、整理できますし、あとで自分がまとめたとこだけをぱらぱらと見直すだけで大分頭に入りますよ。
実際に解決型テーマで小論文を書いておく
必ず本番前までに、「◯◯市をよくするためにあなたが取り組みたいことを述べよ」の解決型テーマで小論文を書いておきましょう。
時間を計る必要はありません。自分の考えを事前にまとめておくために書いておくものですので、総合計画を見ながら書いていけばよいです。
こうすることで、頭の中で市の問題、課題、施策、自分の意見が整理され、本番に似たような解決型テーマが出ても動じずに書き出すことができます。
1600字から2000文字(作文用紙4枚から5枚)のものを書いておきましょう。
実際の書き方
書き方は、結論、現状、解決方法、結論の順で書いていきます。
結論
まずはじめに結論を述べます。
ここは、「◯◯市をよくするために、私は◯点取り組んでみたい。」と書きます。
こうすることで、採点者は、いくつ取り組みがあるんだな、という大枠がつかめ、理解しやすくなります。
だいたい3点から4点あれば足りるかと思います。◯点の部分は、小論文の最後に書いても構いません。
現状分析
◯◯市の現状について、何が問題になっていて、その原因は何なのか、理想の状態はどういった状態なのか、課題は何なのかを述べます。
問題とは、「例えば虐待の数が増えている」のように、それ自体に問題があり、市役所がなにかしら解決に向け動く必要がある状態のことです。
「総合計画」や「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を見たら、色んな分野の問題が記述されていますので、自分の興味ある分野の問題は蛍光ペンで塗っておきましょう。
「農業従事者が高齢化している」「少子高齢化している」「観光客が減っている」「空き屋が増えている「平均寿命が県の平均に比べ低い」「自殺者数が多い」「買い物難民が増えている」等が問題です。
「総合計画」や「まち・ひと・しごと創生総合戦略」には、日本全体の状況や、その市の具体的な数値が挙げられ記述されていることが多いです。
ですから、それらも一緒に記述し、肉付けします。
例えば、空家問題については、「全国的に東京に人口が集中するなか、地域の戸建て住宅が空屋化してきており、令和◯年の空き屋の割合は10%となっており、平成20年から増え続けている。適正な管理がされていない空家は、不法侵入・不法投棄、地震や台風など気象災害による倒壊等の被害、老朽化による損傷・倒壊、まちの景観への影響等が危惧されている」のように記述します。
こうすれば、分かりやすく、採点者に納得してもらえる説明になるとともに、文字数も稼げます。
現状分析においては、下記の現状分析シートのように、整理してみてください。
「問題」がありその「原因」がある。
それに対し、「理想の状態」とその「要因」がある。つまり、「問題」を「理想の状態」にするため、市が施策で変化させるという構図です。この施策展開を次の解決方法で書いていくことになります。
解決方法
解決方法では、現状分析を踏まえて、市がどういったことをするか(施策、事業)を述べていきます。
あくまでも、市が主体の解決方法を考えていきます。といっても、すぐに思い付かないと思います。
その市の「総合計画」や「まち・ひと・しごと創生総合戦略」には具体的に何をやろうとしているか記述されていますので、そこを抜き出して自分なりにアレンジして書いていきましょう。
他の市町村の解決方法を調べて書いてもかまいません。
また、「◯◯市 当初予算の概要」で調べると、具体的な事業内容がわかったりしますので、それを参考にしてみましょう。
これらの資料を読むとわかると思いますが、行政のアプローチには①補助金、②イベントの実施、③施設・物品・システムの整備と運営が主になります。
まず①補助金については分りやすいと思いますが、市民に動機付けをするため、お金を補助するというものです。
例えば、地元産の農林水産物を使用した新商品の試作費やパッケージ費用、展示会出展費用に対し二分の一を補助するというようなものです。
これは、地産地消や新商品開発を動機付けし、促進するための補助金となります。現状分析で述べた問題に対し、補助金でアプローチすることが有効ならば、この手法を解決方法で記述します。
補助金による解決方法の説明では、補助金額、対象者、要件、先進事例、予算の5つを記述しましょう。
補助金額は、割合または定額いくらかというのを記述します。
割合であれば、「試作費の二分の一」などです。市役所の補助金では、二分の一や三分の一というのが多いです。たまに三分の二というのもありますが、全額補助はほとんどありません。よっぽど緊急性があるとか、力をいれなければならないことでないと全額補助はないかと思います。上限が設定されていることも多いです。
定額については、「商店街でイベントを開催することに対し1回につき5千円」等、最初から金額が決まっているものです。
このように、補助金額を割合か定額で記述しましょう。
対象者は補助金をうける人のことです。
「◯歳以上」「市内に本社または営業所を置く事業者」等、簡単でいいので設定しておきます。
要件は、補助金をもらえる条件のことです。
先の商品開発に対する補助金で言えば、「地元産の農林水産物を使うこと」、「必ず販売すること」、「パッケージはデザイナーに頼むこと」、「インターネット上で販売すること」等です。
ここは、補助金の核と言ってもいい部分で、皆さんのアイデアが試されるところでもあります。
先進事例は同じようなことをやっている市町村があれば、その成果を記述します。
先進事例を記述することで、説得力のある小論文に仕上がります 。
予算がどれくらい必要かも出来れば付け加えておきます。
莫大な予算が必要な事業、施策は採点者からは評価されません。
例えば、年間の予算が400億程度の市が、観光客を増やすため、「市が200億かけてカジノをつくる」としても、説得力にかけます。
②のイベントについては、市でどのようなイベントを行うかを記述します。
大会、講座等がイベントにあたります。例えば、「外国人の観光客を増やすために、市内の宿泊業者向けに、英語講座を実施する」、「健康寿命を伸ばし、医療費低減を図るため、体操講座を実施する」、「冬場の観光客確保のため、スキー大会を実施する」等です。
イベントの説明では、そのイベントがその市で既に実施されていないか注意してください。同じようなイベントをしても評価は得られません。
また、目的に対し、適切なイベント内容になっているかも重要です。
例えば、冬場の観光客を増やすために、ビーチバレー大会をやっても効果はありません。
また、同様なイベントで先進事例があると説得感がありいいです。
③の施設・物品・システムの整備と運営については、例えば「子育て支援のために図書館を整備する」「観光客増加のために、妖怪の博物館を整備する」、「市のまちなみの景観を維持するため、草刈り機を整備し、貸し出す」、「災害情報をすばやく届けるため、SNSによる情報配信システムを構築する」等です。
施設を整備すると予算が大きくなりますが、なるほどと思わせるようなものであればいいと思います。
これも既に存在している施設と同じようなものは書かないようにしましょう。
全国の市町村は沢山の施設を抱えており、維持にお金がかかる一方、予算に限りが有ります。
古い施設が多く、修繕や統合が検討されるなか新しくハコモノをつくるにはそれなりに理由が求められます。
新しくつくらなくても、「リフォームして使う」というのも重要です。
よくあるのは廃校活用です。子供がいなくなった地域の学校は廃校が増えており、それを活用する動きが全国的あります。
ホテル、レストラン、農業体験施設、いなか暮らし体験施設にリフォームして利用することも多いです。
こうすることで、新しくつくるようり低コストで実行できますので、今ある古い施設を利用できないかアイデアを出してみましょう。
昔ながらの古い施設は外国人や若い人にうける場合が多いです。廃校利用に関しては、先進事例が沢山ありますので、是非調べて、記述するとよいです。
解決方法のアイデアについては、一度下記の「田園回帰1%戦略: 地元に人と仕事を取り戻す (シリーズ田園回帰)」を一読されることをお勧めします。
本書は、毎日新聞で藻谷浩介氏が賞賛していた本です。
島根県の過疎地域で、若い世代が戻ってきていることをレポートしており、「地域づくり」とか「町おこし」といった漠然としたものをきっちり数値・データにし「1%戦略」にまとめています。
この本を読んでおくだけで、集団討論や面接にもだいぶ役立つと思います。特に地方の市役所を受ける方にはオススメします。
結論
最後に、結論をもう一度述べます。
書き方としては、「以上のように私は◯◯に対する補助金、◯◯のイベント、◯◯の整備と運営の3点取り組んでみたい。◯◯市の現状は・・・であり、早急に解決に取り組むべきであり、これらの取り組みにより、住みやすいまちづくりを行っていきたい」のように、
◯点の取組、現状をもう一度述べ、小論文のテーマ中にある「住みよいまちづくり」「住民の満足度の高いまち」「子育てしやすいまち」「安心して暮らせるまちづくり」などをしていきたいと述べます。
最後に結論を再度述べることで、言いたかったことを採点者に印象強く残すことができます。