市役所の職員提案制度とは

市役所には職員提案制度というものがあります。
これは職員が業務改善や新事業を提案し、審査して、優秀な提案をした職員を表彰するものです。市によっては予算をとって、副賞を贈呈するところもあります。私がいた自治体は商品券を贈呈していました。これは、民間でいう社員表彰みたいなものかもしれません。

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職員提案の目的と概要

職員からの業務改善等及び行政施策に関する提案を制度化することにより、市の職員の市政運営への参加意欲及び施策立案能力の向上を図り、業務の効率化及び市民福祉の向上を目的としています。

職員提案の種類はおおまかに2種類あります。1つ目は業務改善等に関するもの、2つ目は行政施策に関するものです。
業務改善というのは、例えば裏紙を再利用してコスト削減を図る等、使用済み封筒を再利用する、トイレ内に掲示物をする等、新たに予算をとらなくてもすぐに出来る小さいことと考えたらいいと思います。事務事業の改善及び能率が向上するもの、経費の節減又は収入の増加に関するもの、組織の活性化及び組織の啓発に関するもの等があります。

2つ目の行政施策に関する事については、子育て環境改善するために新たに屋内遊具施設をつくる、イノシシ等の有害鳥獣の有効利用を図るため加工施設をつくり、新商品のプロモーション経費について補助金を出す等、新たに予算を確保し、事業として行う大きなことと考えたらいいです。市民サービスの向上に関するもの、住民福祉に関するもの等があげられます。

はっきりした線引きが難しいですが、あまりそこは気にする必要はありません。

職員提案の時期や提出方法については各自治体の総務課や人事課が決めています。
だいたい、職員提案の実施要領があり、それに則って行われます。時期は自治体によってちがいますが、私のいた自治体は夏ごろに募集がありました。

文章を修正している人

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職員提案の審査方法と実行に移すまで

職員提案は総務課等に提出された後、総務課が提案に関係する部署に送付し、現実可能か意見書をもらっていました。意見書では、各課でその提案を採用するか、不採用にするか、その理由等が示され、再度総務課に返されていました。提案に対して、不採用のものも多く、理由としては現行の国の制度や法律では実施が困難、過去に既に実施したが効果がなかった、そもそもやったとしてもいい結果が期待できない等でした。

市長、福市長、各部長からなる審査委員会がその意見書をもとに、提案を審査しました。
審査の基準としては実行可能性、創造性、コスト、サービス向上度等の観点から審査が行われていました。
プレゼンテーションの場を設け、提案について説明させるときもありました。
最後に点数をつけ、順位づけし、上位3位くらいまでを表彰していました。確か、上位3位をとった提案職員には表彰状と商品券が贈呈されていました。

上位3位の提案については、その関係課に政策検討通知書というのが送付され、提案について、実施を検討するよう通知されていました。

協議をしている人

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職員提案の課題

職員提案は、提案されると仕事が増えるということです。
実行者からすると、ただでさえ忙しいのに、他部署の職員から色んな提案が来ると正直うっとうしいというのが本音です。それに対し、意見書を書くという仕事も増えますし、もし審査会で入賞したら、実行に移さなければならず、仕事が増えるのです。人が増えればいいですが増えない中で新たな仕事をやっていかなくてはならないのです。
担当者も自分でいろいろ改善しながらやっているのに横やりが入るのは嫌と思うことがほとんどだと思います。ほとんどの場合、関係課は職員提案に対して、非積極的です。
提案者に「なんで事前に相談なくあんな提案したんだ?」「面倒な仕事増やしてくれたな」「費用の資料をもっと詳しく出してくれ」等々クレームや要望が関係課から提案者に寄せられます。
こうしてだんだん、提案者も面倒になっていなくなってくるのです。私も若い時は職員提案を出したことがありますが、実行する部署に気をつかうようになり、やめてしまいました。

職員提案を実現させるには、当たり前ですが実行する部署の協力が不可欠です。ですから、事前に「こういうこと思っていて職員提案に出したいけどいいですか」等事前に根回しするとともに、そこの実行する部署の担当者と人間関係をつくっておくこと、必要な資料は何でも提案者がつくること等が必要です。実行する部署に負担をなるべくかけないという心がけが必要です。提案しっぱなしであとは関係課でやってくれというのが一番悪いやり方で、提案も実現しにくいです。
もうひとつの職員提案を実現させるやり方としては、自分の担当している仕事に対し、提案するということです。これなら、誰にも迷惑はかかりません。自分の担当する仕事に対し、やってみたい新事業等を提案として出します。普通なら、新事業は予算要求のときに出しますが、職員提案というルートで出す方法もあるのです。この場合関係課の意見書は課長が書くので、事前に課長と協議し、賛同が得られておけば、よい評価も得られます。
審査会でも上位にいく可能性は高いです。どっちみち予算要求はするのは同じなのですが、市長が委員長と務める審査会から政策検討通知書を得ているため、予算も何もしないのに比べ通りやすいです。

市役所の職員提案制度というのは一見よい制度のように見えますが、実行するにはかなりの手間がかかり、それは結局担当課の仕事が増えると言うことであるということです。その上で、実行させるために色んな努力が提案者には求められます。

作業着姿の職員の写真

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